経営を構築するために最も重要だと思うこと

 本稿の画像に私が思う経営の全体像を描いていますが、長く製造業に携わってきたので、製造業であれば、というイメージになっています。他の業種に置き換えるならば、「生産」のところを個々の企業が最も得意とする、優位性を出せるカテゴリーにすれば良いかと思います。この図では「販売」は「マーケティング」に含まれるものとして描いていますが、「販売」で他社と差別化できるのであれば、一つの重要なカテゴリーと位置付けし、そのカテゴリーで重要なファクターを並べてみれば良いと思います。建設業であれば「設計」や「施工」、「運輸業」であれば、「運行管理」や「運転」でも良いと思います。そして、その重要なカテゴリーは「技術」によって他社と差別化できるのです。「技術」は製造業だけのものではなく、簡易な表現をすれば工夫や努力による経験の積み上げなのです。
 そういう定義をすると、私が「技術」と呼んでいるものは、経営を構築する上で最も重要であると思っています。中小企業診断士の資格試験では、経営に必要な多岐にわたる知識が必要とされますが、「技術」を生み出す手法やそのために努力できるための考え方に言及したものはほとんど無いと思います。それらは、多様な考え方があるため、あるいは、企業がノウハウとして外部に公表しないため、一般化しにくいのかもしれません。そうであればなおさら、我々経営支援に携わるものとしては、自分なりの「技術」を生み出す手法やなぜそのために努力できるのかということを、個別の企業や経営者個人の考え方に合わせて提案していかなければならないのだと思います。そしてそれが我々自身の差別化ポイントなのです。
 私は、他の人と違った何ができるかが生きがいの重要な部分を占めると思っています。どう考えて生きるのか、経営者であればどう考えて経営するのか。そして、そのために何を工夫するのか、何に対して努力するのか。そういったことが大切なのではないかと思います。
 私は、今、TRIZ(発明的問題解決法)という考え方を使って経営支援できないかと考えています。考え方や手法は多様なものがあり、どれが正解とは思いませんが、発想に一つのパターンを持っておくことは有用なのではないかと思います。TRIZは、既存の知識を使って独自の課題を解決する、という考え方が気に入っています。先ほど述べた「他の人と違った何ができるか」と矛盾しているようですが、独自の課題に適用することが他の人と違ったことであり、既存の知識を使えば省略できることを一から考えてみたところで、他の人と違ったことをしていることにはならないと考えています。
 今のところは、私が考えていることを要望される経営者の方はあまりおられず、分かりやすく説明できること、製造的な技術だけでなく、一般的なビジネス課題に展開することが、今後の課題と思っています。